【受賞概要】

戸建住宅など比較的軽量な構造物に対する免震装置には転がり型か滑り型の免震支承が用いられる場合が多い。滑り型と比較して転がり型は精度の良い原点復帰性能が得られる。復元力を併せ持つものでは中央部が凹んだ椀型の転がり盤等を用いて重力による復元力を持たせるものがよく知られている。しかしながら椀型の曲面製作はコストアップの要因ともなる。本支承で応用しているゲージ振り子の原理は間隔を変化させた一対のレールとその上を転がる転動体からなり、曲面を用いずに容易に重力による復元力を発生させる事ができる。復元に要する時間(周期)等の挙動も様々に設定する事が可能である。本開発ではこの原理を出発点とし接触応力等の問題も解決した新しい免震装置を開発した。既に実大実験を行い、実際の物件にも適用している。
 
 
▲VP免震支承の転がりレール
  
【受賞選評】

ゲージ振り子の原理に基づく転がり型免震装置は、戸建住宅を対象とした免震支承であり、レール形状を変化させるだけで復元力が発生する「ゲージ振り子」を着想した。通常の転がり支承では重力による復元力を発生させるためには、球体と椀型の盤の組合せが一般的であったが、この原理では平面的なレール(あるいは溝)の間隔(幅)を調整することでそこを転がる球体に復元力を発生させるもので、従来の発想にとらわれないユエークさが評価できる。このゲージ振り子の原理をもとに、接触応力の改善のためにレール形状や材質に改良を加え、十字型のクロスフレームを用いた、実用に耐えうる新しい免震装置に仕上げている。この免震支承の開発にあたっては、様々な実験による性能の検証が行われ、日本建築学会の論文等により公表されている。また、日本免震構造協会において、材料認定も取得しており、実際の免震住宅にも適用されている。ただし、現在のところ適用実績が数棟であり、変位量にかかわらず一定値を示す乙字型の特異な復元力を示すことから、この装置の適用を拡大するには簡易な計算方法の開発が求められる。適用実績を増やすためには引き続き開発が必要となることから、今後の新たなる開発を期待して、特別賞を授与するものである。
(社団法人日本免震構造協会表彰委員会委員  北村 春幸氏)